2005年1月に読んだ本     

いったい一年に何冊本を読めるんでしょうね?頑張っても100冊?そんなには無理かな。
とすると、あと50年生きたとしても(ずいぶん長生きだな)あと読める本はたった5000冊。
そう思うと厳選して読まねばという気がしてきますね。
今年も衝撃を感じるくらいの一冊と出会えることを願って!


殺人症候群  貫井徳郎               7.7カラット
今年最初の一冊としては、不足なしという感じの読み応え。心臓移植を待つ息子のために殺人を繰り返す看護婦の母親の事件と、未成年や責任能力のない精神的に病を抱えた人が犯人であったために罰せられなかった被害者の復讐代行殺人といういう事件。この二つの事件がいったいどこで重なるのか?と思いながら読み進むと意外な展開が!常に緊張感がありテンポもいい。結構ボリュームがあるのに一気に読ませる面白さ。
テーマ自体は重く、少年法のあり方などは実際にも問題になってきた。もし、被害者だったらと思うと絶対に絶対に納得のいかない事が多い。子供だから?病気だから?どこで線を引く?罰は何のため?確かに、罰は被害者の遺族の気を晴らすためではない。でも・・・。明日そんな事件の被害者に私たちがならないと誰が言えるだろう?だけど、どんなに考えても正解はないんだろうな。そのくらい重たいテーマだ。人を裁けるのは神だけか?神はホントに裁いてくれるのか?知らんふりしてないか?

リピート 乾くるみ 5.9カラット
前回、「イニシエーションラブ」がイマイチだった乾くるみ。巷の評価は高いらしいが。「リピート」でリベンジなるか?と読み始めた。王様の評価は結構○だそうだ。10ヶ月前に戻ってやり直せるのだが、やり直しますか?と誘いを受けた10人。この10ヶ月の記憶は残ったまま、10ヶ月前の体に戻る事ができるというのだ。疑いつつも「リピート」する10人の人々。しかしリピートした世界で死者が出て・・・。SFミステリーとでも言おうか。面白い設定と、なるほど!というトリック。前の「イニシエーションラブ」もトリック自体はびっくりするものだった。今回もそれについては本当に良く出来ている。前回のような「ぬるい恋愛小説」という不満もない。が、なぜか好きになれないのは、文体のせいか?登場人物がきらいなのか?自分でも良くわからない。ほら、人間関係でも時々あるでしょう?どこが嫌ってはっきりいえないけど何となくウマが合わないって言うかムシが好かないって言うか。それは小説の中の登場人物に対してじゃなく「乾くるみの小説について」なんだと思う。登場人物自体はキライなタイプだけど作品全体は好き!って小説はいくらでもあるから。あえて言うなら人物描写に深みがない?何となく薄っぺらな感じがする。漫画の登場人物を見てるような感じ。(あ、漫画を馬鹿にしてるわけではなく)これは人それぞれというか好みの問題なんだろうが私は登場人物の内面がえぐり出されているような作品がすきなので。

レイクサイド 東野圭吾 7.3カラット
大作、というわけではないが、なかなか良い味が出ている作品だと思う。
中学お受験の子供とその家族が塾講師とともに湖の近くの別荘に合宿に訪れる。主人公の子供は自分の実の子ではなく、妻の連れ子である。会社の部下と浮気もしている上、妻の浮気もうたがっているという、家庭は危うい状態。そんな主人公の所に愛人の女性が別荘まで押しかけてくる。そして、彼が留守の間に妻によって殺される愛人。本当の犯人は?お受験仲間の理解しがたい結束はなぜ?ラストでわかる意外な犯人の姿には、不気味さも感じつつ、しみじみとやさしい気持ちにもなる。本当の被害者は受験地獄に小学生の頃から投げ込まれた子供達なのだろうか?子供たちの冷め切った、でも熱い眼差しが見えるような気がする。最後まで読んで愛人の死体が永遠に湖から上がってこないことを私もひそかに願った。

さまよう刃 東野圭吾 7.9カラット
この間読んだ貫井徳郎の「殺人症候群」とテーマ自体は良く似ている。
高校生の一人娘を乱暴された上に殺された父親が、犯人の少年の一人を惨殺し、もう一人を追ってすべてをすてて復讐に走る。犯人は未成年だから、つかまったとしても数年で戻ってくるのだ。
父親の視点、警察の視点、犯人達の仲間の視点、復讐に走る父親を助ける女性とそれぞれの心の動きを浮き彫りにしながら、物語は進行してゆく。東野圭吾は本当に登場人物の心理描写が巧みで感情移入しやすい。犯人の仲間の小悪党の少年でさえものすごくうまく描かれていて、同情も覚えつつ憎しみも覚える。そして復讐する父親については、何とか復讐が遂げられるよう祈りながら読んでしまう。復讐なんて認められないし、それは殺人でしかないのだが、それでもお願いだから彼の思いを晴らさせてあげてくれと、願ってしまうのは私だけではないはずだ。

明日の記憶 荻原浩 8.3カラット
ここ数ヶ月の中で最も心に残る作品だった。50代の広告代理店の部長が突然若年性アルツハイマーにかかり、それからの数ヶ月を綴っている作品。若年性アルツハイマーにかかった本人の視点から書かれているというのも、とても斬新だし、そのせいで本当に真に迫るものがある。文章は穏やかでやさしいのに内容は残酷で悲しい。会社の人々や取引先、家族、陶芸教室の先生の反応が心に突き刺さる。彼が綴る日記が何度も出てくるのだが、その内容がだんだんおぼつかなくなって行くのが胸を締め付けられる。6年前に亡くなった私の父は脳梗塞を起こしていて「自分がボケ始めていること」を自分で解りつつそれを覆そうと必死だった。その姿を思い出してしまった。
悲しいラストなのだが、とても美しく映画のワンシーンの様に心に残る。本当に心にしみる。
と、ここまで書いて情けなくなってきた。凄く感動したのに、それを読んでない人に伝わるように表現するのはとっても難しい。「さまよう刃」や「殺人症候群」の様にテーマがはっきりしていると感想も書きやすいし、逆に「リピート」の様にこういうところが好みじゃなかった、とはっきりいえる作品も書きやすい。「明日の記憶」」はごめんなさい。私のつたない文章力では感動が伝わりません。もっと文章力磨くので、だまされたと思ってこの作品読んでみて!絶対お勧め。

 そして夜は甦る 原寮 6.1カラット
「ハードボイルドは好みじゃない」と読みもしないで「読まず嫌い」していた私に王様が勧めてくれた一冊。「これを読んでから判断しなさい」とのこと。でも、やっぱり私には向かないかも。そもそも「ハードボイルド」の定義は何だろう?大好きな柴田よしきの「RIKO」シリーズは王様に言わせるとハードボイルドだそうだ。この作品はミステリーとしては面白いかもしれないけど、でも登場人物がどいつもこいつもあやしすぎて「意外な犯人」が意外って程でもない。主人公の探偵にどうも感情移入できないし。といいながら後半一気に読みきってしまったからある程度夢中にはなったのかもしれないけど。ラストのラストはちょっと胸に響く。ただ王様は、「石原慎太郎が一国会議員でしかなかった時にこれを書いたのはすごい!」と言っていてそれはそうかもしれない。で、結局ハードボイルドって何をもって言うんだろう?と頭の中が???で一杯になったわけだが、「ま、世の中には面白い小説面白くない小説の2種類しかジャンルはないか」と簡単に考える事にした。

 交渉人 五十嵐貴久 7.8カラット
これも設定が今までに無い新鮮さを感じる。3人組のコンビニ強盗が大病院に立てこもり、患者と医者、看護婦を人質にしてお金と逃走手段を要求する。病院はすぐに警察に取り囲まれ、警視庁の交渉人が犯人との交渉を勧めるという展開だ。行き当たりばったりで立てこもったように見える強盗たちだがその真相は?細かい部分で「読めた!」と悦に入っていたら、最後の最後で驚かされた。「そう来たか〜!」という感じだ。しかもその全容を知るとやるせなさと憤りを感じざるを得ない。大病院という権力にわれわれはどこまで立ち向かえるのか?「殺人症候群」「さまよう刃」とともに犯罪を犯す側に正義を感じ、感情移入をしてしまう。最近はこういう設定が多いのかな?



                                


2月
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